名作を読む49
ハウフ作「隊商」
隊商=キャラバンだが、一種の運命共同体のようなグループで、厳しい気候や情け容赦ない盗賊から身を守りながら、目的地まで旅を続ける。無事に目的に着くまでの一期一会的なグループなのだ。
そんなキャラバン隊のメンバーが一人ひとり身の上話的に毎晩語った物語という構成になっている。当初あまり関係がない話と思われるが、やがて砂漠の王オルバザンと言う一人の男がキーマンとして浮かび上がってくる。
若かった作者のストーリーテラーとしての想像力は大したものだと思う。作者はドイツ人だが、何となく砂漠の真ん中を旅しているような気にさせることに成功しているし、アラビア的な魔法の話も上手く織り込んでいる。
日本にも民話昔話的をかなりデフォルメしながら、面白おかしく、時には怖くて悲しく子どもたちに語ってくれた語り部がいらっしゃった。それを聞いている子どもたちに豊かな想像力の芽が育まれたことは、間違いない。劇作家の井上ひさしさんも、幼い頃の体験として何かに書いていらっしゃったことを思い出した。