名作選読む50
ビルドラック作「ライオンのめがね」
視力が弱り、狩りがうまくできなくなったライオンの王様が、人間からメガネをもらい元通りの狩りができるようになる。
ところが好事魔多しで、ある日大切なメガネをなくしてしまう。自分の不注意なのに身の回りの世話をする猿はお尻をぶたれ、動物たちはみなメガネとやらを探しに行き、いやはや大変!最後はぶたれた猿が寝床の干し草から見つけて、めでたしめでたし。
しかし、これはいったい何の寓話なのだろう?王様を、社長とかどこかの大臣だとすれば、その権威は何によって保たれているのか?ライオンの場合は狩りの技術だろうが、人間は何?知識?技能?表現力?判断力?そしてそれを失った時、やはり右往左往してしまうのではないだろうか?
人間には、ライオンの王様のように家来なんて普通はいない。だからこそ不可避な老いの訪れを少しでも遅らせたいのだ。
高齢者ゾーンの入口前に立つとわかる。「あっ、こんなこと昔はやすやすとできたのに?」と言うことがいくつも。もちろん個人差はあるだろうが、それぞれの老い方にあった生き方がきっとあるのだと思う。落語の世界にはご隠居さんと言う知恵者がいて、若者にあれこれ助言しているけど、今の日本、ご隠居さんとのお付き合いが成立している若者とか、どこかにいるのだろうか?