名作を読む59
ベッケル短編から「白いしか」を読む
白ゆり姫と呼ばれていた美しい騎士の娘が、実は白いしかだったという話。
事の起こりは、狩りの途中で羊飼いから鹿にからかわれたという話を聞いたことに始まる。
ならばその白いしかを捕らえてやろうと、その気になった若者が、鹿を射ようとすれば、鹿は少女の姿に変わる。さらに逃げるところを射掛けれは、捕らえた白いしかは、白ゆり姫だったと…。
この不思議な話の背景には、異教徒やジプシーに対する偏った見方が横たわっている気がする。日本人が異形の者を、鬼や天狗に見立てたように、スペイン人の作者もキリスト教信者以外の人々を異端視する傾向があったのかもしれない。
グローバル化されたとは言え、現代だって未知なるものへの畏怖はある。さしづめUFOなどその典型かもしれない。