オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび128

名作を読む76

サンド作「愛の妖精」を読む

妖精、とは言っても人間をからかったり、いたずらしたりする妖精だ。他にも仲の良い双子に対する迷信や怪しい呪いで病気を治す悪魔、不気味な鬼火など、前近代的な小道具が、物語の舞台に現れる。少し昔の民話の要素を残しているのだ。

そして、それらの偏見や誤解が、特定の人を差別し追い込んでいることをサンドは、暗示するように書いている。サンドが女性解放に情熱を傾けていたことと、どこかで結びつく気もする。

話は、誤解や偏見を悟った双子の弟ランドリーが、こおろぎとあだ名されていたお転婆娘ファデットと仲良くなっていき、ファデットもココロを開いて変わっていく。ランドリーと分離不安に駆られていた兄のシルビーネは、ファデットの治療により回復し、ナポレオン軍の兵隊として手柄を立てる。

迷信や偏見は、人の心の弱い部分に巣を作る。21世紀になっても、姿や形を変えて、人々を苦しめている構図は、至るところに見受けられる。サンドの思いを理解して、私たちが向き合い続けなければならない問題がそこにある。