オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび192

宇沢弘文「経済学は人びとを幸福にできるか」を読む

 

経世済民を語源とする経済学には、社会を改善し、生活を豊かにするための学問という理想がある。いや、あったはずだ。その理想を追い続けた一人が今回の著者宇沢弘文その人であります。

アメリカやイギリスでの学究生活を踏まえて、内容は極めて多岐に及んでいるが、二点に絞って感想もどきを綴ってみたい。

一つは、一高の寮生活やケンブリッジのカレッジ生活を振り返って、リベラルアーツの重要性を説いている部分。東大の学園紛争時代に丸山真男が、駒場リベラルアーツの場として、そこから先は法律や経済の専門学校に変えようとしていた改革案にも触れている。

何をもって教養とするか?江戸時代だったら儒教全盛だったから、四書五経ということになるかなぁ。古代ローマで哲学・文法・修辞・論理がリベラルアーツの主要科目を形成していた史実と似ている。

さて現代は?リベラルアーツを標榜する学部や大学が日本にもあるけれど、いろいろなことに首を突っ込んでも大丈夫的な幅の広さを売りをそのまま売りにしているような気がする。それでいいのだろうか?

二つ目は、社会的共通資本。宇沢先生の思想のキーワードだ。SDGsを標語のように、あちこちで目にするけれど、宇沢流に言えば、社会的共通資本を維持していくことでしょう。そして、それは本書中何度も出てくるけれど、新自由主義の真反対にあるものです。利潤追求に走り、自己決定自己責任を押し付けて、その結果失われてしまったものは何か?SDGsを叫ぶ前に、もう一度振り返ってみるべきだと思うのですが。