オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび225

磯田道史「素顔の西郷隆盛」を読む

 

タイトルの通り、西郷隆盛の生涯を追いかけた本なのだが、今まで知らなかった史実と出会えた。それが歴史家が書いた本を読む面白さなのだろう。

鳥羽伏見の戦いの時、錦の御旗を押し立てて官軍となった薩長軍に、幕府軍が追い込まれたのは有名な話。その後徳川慶喜が夜中こっそり大坂城を抜け出して江戸に帰ってしまい、総大将が軍を見捨てた話として有名だ。

しかし、この背景にイギリス公使パークスが動いていたという。もし朝廷側が日本の主権者であるならば、局外中立を解き、官軍に加担する場合があり得ると。これがどうやら慶喜が逃げた大きな一因らしい。薩長軍でさえ手に負えないのに、欧米列強まで相手にはできませんからね。

西郷隆盛の人生は、実に揺れ幅が大きい。日本を変革する英雄をやっていたかと思うと、鹿児島に帰ってしまう。それは西南戦争の前だけではなく、弟を亡くした戊辰戦争で東北方面が一段落した後もそう。また大活躍が始まる前に、二度島流しされているが、その時もこの流人がのちの英雄西郷隆盛その人になろうとは、誰もが予想出来なかったろう。英雄として祭り上げられる時期と大変な苦労を味わう時期とが、まるで交互にやってきて西郷の運命を弄んでいるかのようだ。

本書によれば、究極の政治とは人々を教えることであり、道徳の実現と西郷は考えていたらしい。その結果が征韓(実際には遣韓)論後に帰郷しての私学校だったのだろうか?IT社会となり、AIが物理的な作業部分を担うようになつている現在と、やみくもに西洋化=近代化に邁進した明治初期は似ているのかもしれない。結局、心を育てることが政治の目標なのよ・・と考えていたのだろう。