オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび226

鈴木松美「あの人の声はなぜ魅力的なのか?」

 

学校の音楽で教えられている発声は「無理のない自然な発声」ということになっている。合唱部やさらには社会においての一般合唱団の発声もその延長線にあり、ビブラートが過度にかからない正しいピッチが求められていると思う。私自身45年間、一応そのような発声を良しとして、音楽を教えたり、合唱を続けてきた。

ところが我が国の伝統的な歌謡は、かなり対極的な発声をしている。謡、義太夫長唄・・。局所的な技術としての「こぶし」。琵琶を始めて5年間、琵琶うたに適した発声を模索する日々が続いている。

日本人は従来欧米人にも比べて背が低かった。本書第三章に出てくるファントの法則によると、背の高さを共鳴体である身体の大きさとすれば、欧米人は低い周波数が出しやすく、日本人は高い周波数が出しやすいことになる。そこでどうも日本人は低い周波数をもつ声に憧れる傾向があるようだ。それが伝統的なうたに通じているのだろうか? そう言えば読経の声もとても低い。

著者は、最終章で科学警察研究所で容疑者の声紋分析に取り組んできた経験を報告している。声の特徴を犯罪調査に活用してきた人なのだ。自分の声の傾向や特徴を知ることで、自分のうたを創り上げる情報が得られれば、多くの歌い手にとって朗報でしょう。