アルノ・グリューン「人はなぜ憎しみを抱くのか」を読む2
権威は服従を強いる。どんな残虐な行為も「自分は命令に従ったまでのこと」で済まされてしまう。丸山真男が戦後「現代政治の思想と行動」で指摘したように、どこにも責任の所在がない仕組みが出来上がる。本書ではナチスの事例について述べている。さらに責任を直視できない人は、こんな困難にも耐えている自分を憐れむのだから始末が悪い。
話は飛んでしまうけど「負け組でこそ本当に人間らしく生きられる」と言う発言が出てくる。私自身は人生に勝ち負けがあるか? 64にもなって未だによくわからないし、あったとしてもそれは資産や地位ではないだろうと自分に言い聞かせている。そのこと自体がすでに負け組なのかな?
そもそも人生で成功したとは何なのか? 自分自身に対して忠実でいられることこそが優先ではないか? そんな負け組こそが幸せになるのにピッタリだと作者は言う。
そうは言っても、今より少しはオイシイ生活に憧れてしまう。つまり欲望を刺激されて消費行動を煽られているわけだが、それはすでに見せかけ人間への道を歩み出していると言うことなのだろうか? (つづく)