オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび239

大江健三郎「伝える言葉 プラス」を読む。

 

初めの方で武満徹についてふれている一文があり、この本を読んでみようと思ったわけですが、エラボレーションという言葉を使って、人生を通じて磨き上げること、大江さんにとっては、作家ですから書いた言葉を書き直し続けることの価値を語っています。日々の経験を反芻し且つ更新し続けることが、私のように子どもたちの成長に関わらせていただいている仕事をしている者には特に大切な心がけなのだと感じました。

本書では、渡辺一夫、息子の大江光、サイード・・さまざまな交流の思い出を語っているが、作家というおそらくは個人的な作業の中で、彼らとの対話の中から大江さんが、執筆に向けたきっかけ=動機付けを多く得ていたことが、よくわかる。

このエッセイが出版されてから15年、大江健三郎さんがこの本の中で何度も危惧している憲法教育基本法のこと、戦争のこと、歴史教科書のことが少しでも好転しただろうか? その問いには本人にとって残念な答えが虚ろに響くだろう。もっと言えば大江健三郎というオピニオンリーダーの発信を人々は正面から受け止めてきたのだろうか?

「昔、大江健三郎という作家がいました」という伝え方をするのは、まだ早すぎるでしょうに。