なだいなだ「ふり返る勇気」を読む。
後にも先にも一度だけだが、N教組の全国教研大会に参加したことがある。その頃も、何故だか音楽を教える先生をやっていて、音楽科の分科会に出たのだけど、いやあーいろいろな考えがあるなぁとそれだけは学んだ。その時の全体会の基調講演の講師が、なだいなださんで肩の力が抜けるような独特の語り口が嬉しかった。
本書にも登場するのだけど、インターネット政党老人党というのを始めていたり、お隣の鎌倉市で自然環境を守る活動に取り組まれていた。
このエッセイ集は、2002〜2006年にかけて書かれたもので、政治家としては小泉首相や福島瑞穂氏の名前がちょくちょく出てくる。バブルの負の遺産の精算には他に方法がないと言わんばかりの勢いで、新自由主義の旋風が列島を吹き抜けた時代だ。アメリカではJrの方のブッシュ大統領がイラク派兵を決めた頃。著者の立ち位置は一貫していて「ちゃんと考えなければダメでしょ!」「一人ひとりが考え判断する自由を守る」に尽きる。氏が亡くなられて8年が経つ。その間日本に住む人たちは直面する幾多の問題と正対し、考えることを止めずに来れたのだろうか?
「編集者への提案」と題した文がある。老いについてとか、死についてとか、書いて欲しいと依頼され、いやになってしまっている気持ちが書かれている。そして著者は言う。老人にも若い頃があった。その頃を思い出して書いてはどうか?と。また若い読者が今の老人をどう見ているか?その見方が年齢と共にどう変化するか? を追いかけるのも一興だと。たしかに老人がいかにも老人らしいことを書いても、面白くも何ともない。大いに参考になりました。