中山涙「浅草芸人」を読む3
川田晴久と言えば、浪花節からオペラまで何でも歌った人というイメージを持っていました。きっかけは益田キートンに広沢虎造の真似を勧められたことなんですね。本当は二枚目路線で行きたかった川田が結果何でも歌いこなせる芸人になり、美空ひばりに師匠と呼ばれるのですから、運命ってわからないものです。あきれたぼういずは、川田の浪花節、坊屋三郎のポパイ、キートンのヨーデル、芝俊英の二枚目路線で当たるのです。
エノケンとロッパが東宝へ去ったあとの人気者が三人登場する。シミキンこと清水金一。地方巡業から浅草へ成り上がっていったデン助=大宮敏光。そしてたけしの師匠、深見千三郎は流行歌手美ち奴の実弟。本書では軍需工場に動員され、左手の四本の指を失った話や東京の空襲で両親や幼い甥を亡くした話が語られている。
本書で語られる多彩で多様な顔ぶれ! 浅草を舞台に育ったタレントたちは、戦後も大活躍して私たちを楽しませてくれた。話はまだまだ続くけど、ボクが何も知らなかった戦前の浅草部分だけを、オヤジのあくびには書きつけておきます。
そして浅草を起点にした笑いは紛れもなく、戦後の日本人にも元気と活力をもたらしたのです。