オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび325

石井公成「ものまねの歴史」を読む1

 


冒頭で、お寺の山門で睨みを効かせている仁王様の真似が狂言に取り入れられ、やがて歌舞伎に繋がる話が出てくる。日本人は真似が得意でオリジナリティにかけるなどという評があるが、魯迅が「模倣がうまいのは短所ではない」と言ってくれている。本家中国にオリジナルがある文化が日本にはたくさんあるわけで、ちょっと嬉しい。

話は、インド、中国、新羅のモノマネ芸の歴史を辿る。仏教の教えを広めるために芸が活用された例が登場するが、そのような「価値ある芸」でなければ記録には残らなかったとだろう。

日本におけるモノマネ芸の祖としては、推古二十年、百済から来た味摩子による伎楽が最初らしい。本書では、その後天武天皇が伎楽以外の国内の歌や芸能を保護収集、育成したことや例の大仏開眼の折に唐散楽が演じられた歴史を伝えている。神話関連では、山幸海幸の話で兄が弟に詫びる仕草が、現在のどじょうすくいに結びつく。天の岩戸の前で天宇受売命がアラレもない姿で踊り、神々一同爆笑の渦に包まれたというのは、当時実際にそれを演じた俳優の存在を想像させる。ちなみに伎楽の内容も、かなり猥雑で、男根の巨大模型という具体物が登場する。一同そんなに眉をひそめることなく、おおらかに笑いこけていたのだろう。