名作を読む95
ホフマン作「くるみ割り人形」を読む
先日読んだゲーテの「君よ知るや南の国」では演劇好きの主人公が、オペラ興行に消極的になる様子が描かれている。この物語の場合はチャイコフスキーによってバレエのための音楽が作曲され、むしろその方が有名になってしまった感じです。
映画になるときにも感じるのですが、文字言葉からのイマジネーションや印象が音楽になると、かなり変わってしまう。だからこそ元が文学なら、それをしっかり読んでおきたいと思うのです。
野坂昭如さんが作詞した「おもちゃのチャチャチャ」のモチーフは、きっと「くるみわり人形」に違いない。
本編は、おとぎ話のような夢の世界と少女マリーを取り囲む現実世界が微妙に交錯するファンタジー。お菓子やおいしいお肉やソーセージ、くるみ割り人形をはじめとする大好きな人形たちが奇想天外なストーリーを進めます。
この具体と抽象の間を行き来する世界を表現するのは、音楽が得意とするところ。チャイコフスキーの名曲は生まれるべくして生まれたと言えるでしょう。ちなみに作者ホフマン自身には作曲家としての横顔があり、アマデウス! という筆名があったほどなのです。