大谷能生「平成日本の音楽の教科書」を読む1
音楽が好きですか? と尋ねたら、かなり大勢の人が好きと答えるだろう。では音楽が得意ですか? と聞くと、かなり首を傾げて手を挙げる人が減ってしまうと思う。もっと突っ込んで、学校の音楽の授業が楽しかったですか? と聞いたらどうだろう。楽しいという字が入っている科目は「音楽」だけなのに。
音楽教育と言えば、ドレミ音階からスタート! もはや疑う人がいない常識かもしれません。けれど筆者は、日本の音楽教育を始めた伊沢修二が、江戸時代の新内や清元という日本独自の歌い回しを全否定していることをしっかりと指摘する。邦楽が口伝で教授されるのは拍節や音律感が、西洋音楽と違うことを守ろうとしているのでしょう。
続いて筆者はざっくり小学校の音楽教育では、どんなことを感じ取れるようになったらいいか? を語っていく。行間を丁寧に読み込んでいくと、自分の声をちゃんと聴けるようになること、楽器との出会いを通して自分の身体の外に音があることを知り、楽器で音を出したり歌を歌ったりを繰り返しながら、楽音に気づいていくこと・・などが大切だと書いている。
私は平素は教える側なので、教えられる側から書けば、こういうことか! と本書から学びました。