オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび381

大谷能生「平成日本の音楽の教科書」を読む2

 


音楽教育の話は、中学校へと移行していく。おっとりと筆を進めていた筆者は、突然自身が中学生に戻ったように、伝統音楽学習や従来型の西洋音楽学習の問題点を指摘し始める。まるで思春期の屁理屈をこねくり回していた頃のボクのようである。

公共の場での音楽教育と自我が目覚め表現について悩み始める個は葛藤を引き起こす。非常に良い一般化された当たり障りのない教材とインパクトの強い個性を売りにした生活の中で響いている音楽の矛盾もそうだ。だから学校で教わった音楽と少なからず距離を置きたがる人が多いのだ。

本書で、美空ひばりがポピュラー邦楽を具現化した歌手であったと書いている。演歌からポピュラーまで縦横無尽に歌いこなした不世出の歌手が、平成の年号を聞く頃に亡くなり、彼女以降日本の伝統的な情緒感とポップスの楽しさの両方を表現できる人はいない。彼女の師匠である川田晴久は何でも歌った芸人だけど、その貪欲さが今の歌手からは感じられない。

だから欠落した文化を補うかのように、明治以前の近代音楽教育が始まる前に日本人はどんな音楽を楽しんでいたのか? をしゃかりきになって教えようとしているのかもしれない。

これも個人的な話だけど、何か心を揺さぶる歌声や楽器の音色が先立って、そこがスタートじゃないのかな? 少なくともボクは琵琶の音色が好きになったところから習い始めました。これ聴いておきなさい! 覚えておきなさい! じゃ、その気にならないと思うのですがねぇ。