オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび387

納富信留プラトン」を読む1

 


「とりあえずこういうことにしておこうか?」そのように言い聞かせないと先に進めないことが、沢山ある。古代ギリシアの人々だってそれは同じでしょう。ところがそこへ「あなたと思っていることは、本当にそれが確かなことなのか? それでいいのか?」と予想外の問いを浴びせてくる者が現れた。

「いったい何なのだ? この人は?」自分なりの答えをひっくり返された事により、多くの人が迷った。いわゆるアポリアですね。だからこの人、つまりソクラテスは人々を困らせていた謎の人だったとボクは思う。まぁ、現在もこのような問いを必要としているはずなのだけど・・。ソクラテス自身は、それで歴史の襞の中に埋もれていってしまったらおしまいのはずだった。

ところが、40歳くらい歳が離れた弟子にプラトンという者がいて、ソクラテスが人々に語り、対話していたことを書いた。それはプラトンがアカデミアなる学園を開いた時期と重なる。教師として伝えたい内容を彼の師であるソクラテスに求めたのだ。

著者はここでプラトンが生きた時代のギリシアを説明する。民主政と寡頭政治の間を行き来する政治体制、かなり酷いことをした寡頭政治の指導者にはプラトンの親戚もいたし、ソクラテスの弟子もいて、やがてソクラテスを死に追い込む遠因となる。揺れ動く現実の前に人々は懐疑的になり、所詮価値なんて相対的なのよ! と、そんな気分だったらしい。(つづく)