オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび388

納富信留プラトン」を読む2

 


正しいとか、美しいとか、善いとか、現実とは違う次元で離れて存在する。それがプラトンの言うイデア。著者はそれは理想主義や彼岸主義とかではなく、プラトン哲学の現実そのものを見据える破壊力だと言う。イデアについては、有名な洞窟に閉じ込められた囚人の例え話が出てくるのだが、ボク的に言い換えれば、暗室でも光を求めて育つもやしのようにイデアを感じていたい。

ソクラテスプラトンも教育に情熱を注いだ。今日、知識技能偏重のマニュアル化された教育方法を是正しようとして、主体的に学ぶ力が重視されているが、そもそも何が人の心を揺さぶり、学びへと向かわせるのか? それはソクラテスの昔から対話なのだ。いわゆる無知の知の自覚を促し、人を思い込みから解放する対話は、元祖ソクラテスにおいても、ほとんど成功していない。ソクラテスの対話は、21世紀に生きる私たちから見れば、ずいぶんまどろっこしく感じるのは事実だ。だけど少し方法を変えれば、授業中のほんの一言、ほんの一瞬の対話がその人の人生を根こそぎ揺さぶることだってあり得るのではないだろうか? 

本書は「著者がプラトンと、どう向き合い何を学んできたのか?」を語っている。著者というフィルターを通すことでプラトンの思想が生き生きと蘇ってくる。そんな感想を持ちました。