オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび395

笠嶋忠幸「書を味わう」を読む1

 


元々文字は象形なのだから、絵は文字のご先祖さまのような存在かもしれない。絵画化した文字遊びや文に添えられた絵を前半では紹介している。文字とはかくあるべしという書き方的な堅い考えから読者を解きはなそうとしているようだ。

続いて禅僧による一行書が紹介される。限られた字数なので一字一字の筆遣いにしっかり向き合える。そこから見えて来る個性や心境に感じるところ大である。

書家には三蹟という三人のスーパースターがいる。当然本書でも紹介されており、一番手は小野道風。楷書、行書、草書を自在に使い分け、和様と呼ばれる今の書法が平安時代に確立していた事がわかる。

続いて古今和歌集の写本である高野切の書体。伝紀貫之書だが、実際には古今和歌集成立の100年後に写されたらしい。想定される筆者が三人いることから、それぞれ第一種、第二種、第三種と呼ばれ、その特徴が研究されている。古今和歌集は平安貴族にとって必須科目だから誰もが本を求めただろう。印刷技術はない時代だから、書き写すしか方法はなく同時に後世の手本となったのだ。本書は毛筆字の美しさを語るが、同時に作者がどのように筆を使ったのか? その技術にもふれている。まずは墨のつけ方。たっぶりの一気書き、掠れてもお構いなしでどんどん書くか、休み休み行くか? 続いて筆を送る速さ。当然勢いが時に現れるわけでして・・。三つ目にレイアウト。右肩上がりか、はたまた字の内容や近くに絵が描かれている場合は、その位置との兼ね合い。紙が貴重品であった時代には、それこそある程度の構想を持って書かれているはずだ。「字は人を表す」ではないが、字から透けて見えるものは大きいと思いました。