オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび401

井上ひさしボローニャ紀行」を読む

 


旅の初めからスリに鞄を盗られる。私も若い頃にイタリアで似たような酷い目にあった事を思い出してしまった。

この紀行文が書かれたのが、2004年頃。ちょうどサッカーセリエAボローニャ中田英寿が活躍していた時期と重なっていて、彼の名前がちょくちょく顔を出す。中田英寿を引き留める材料がボローニャ大学。知る人ぞ知るヨーロッパ最古の大学。いろいろな国からローマ法を学ぶためにやって来た。彼らは国毎に組合を作って教授を選ぶ。ラテン語のウニウェルシタスがユニバーシティになるのだけれど、元々は自治組合のことだったのですね。

作者はボローニャのあちこちを巡り、そこに根付いている人々の生活スタイルを丹念に取材している。そこから井上ひさしさんがこの街に惹きつけられた理由が浮かび上がってくる。文中には直接言葉として書き込んでいないが、それは共生社会としてボローニャが刻んできた歴史だと思う。

最後に個人的に見過ごせないのが、作者が訪れた当時のイタリアの学校事情。1クラスの定員は20人で担当教員が3人いるのだそうだ。翻って日本は当時も40人学級、もちろん担任は一人。教員の多忙化実態はますます酷くなるばかり。これでいいのか? 日本の教育!