オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび403

今枝由郎「ブータンに魅せられて」を読む1

 


ブータンは1970年代まで実質外国人立ち入り禁止、つまり鎖国状態だった。バリでチベット文化を研究していた作者が、ブータンに行きたいと思い立ち、数年にわたる大変な苦労の末に入国し、しかも国立図書館顧問に就く経緯が語られる。そして十数年のブータン在住生活が始まるのだが、このような経験は稀有であり、他の興味本位、観光案内的な本とは一線を画していると思う。国立図書館と言っても、蔵書はお経であり、利用者は僧侶。そうブータンは大変熱心な仏教徒の国なのだ。

ブータン王国の発展に対する考え方として、無闇に自動車道路を造らない話が出てくる。日本にいると自動車が通る道路=生活不可欠と思えるが、物流の増加や利便性などを度外視して、車が通る道を造らない。だから未だに徒歩で移動している。それでは何が収入源なのかと言えば、水力発電が国家歳入の四割に及ぶという。ヒマラヤの南斜面に位置するこの国が水力発電に適していることは容易に想像できる。第四代国王曰く「ヒマラヤが聳え、雨雪が降り、森林が茂る限り、我が国は安泰であり、政府はそう努める」