オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび414

三谷雅純「ヒトは人のはじまり」

 


著者は霊長類学者。サルや類人猿の社会や行動を通して見えてくる人間っての本質を探る科学なのだそうだ。

ネアンデルタール人から現代のヒトに移り変わる過程で「文化のビッグ・バン」が起きて、ヒトは言葉を獲得したと言う。

さて本書には、もちろんチンパンジーやゴリラの話がたくさん出てくるが、それ以上に障がいのある方の話やフィールドワークで訪れた村でのアフリカの人々の交流に紙面が割かれている。本書はとても読みやすいのだが、筆者によればそれは自身が漢字の理解に対してLDだからと言う。また脳梗塞を患った経験からだろうか? 身体に障がいがある人への眼差しが共感的だ。いわゆる共生社会に向けた思いが文章の隙間から伺える。

ゴリラやチンパンジーは、抽象的な意味は解さないかもしれないが、直接的な欲求についてのやりとりはできるらしい。ひょっとすると手話で動物たちと交流できるかもしれないな・・ふと私はドリトル先生の物語を思い出して読んでいた。あの物語に登場する動物たちが誰かのアバターであるならば、ドリトル先生は多様性の中で生きていた人だったんだなぁ・・などと。