オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび416

マルクス・ガブリエル他 斎藤幸平編「未来への大分岐」を読む1

 


最初に登場するのは、マイケル・ハート。ボクもネグリとの共著「マルチチュード」を読みかじって書棚の片隅に鎮座している。冒頭から資本主義は飼い慣らせるのか? と刺激的な発言が出てくる。

当然政治の力に話題は及ぶ。あまたの社会運動の消長が示すように、水平的に連帯感だけを頼りに社会を変革することは難しい。逆に多くの支持を得たリーダーが新たな未来を示してきた歴史はたしかにある。ところが、この人で本当にいいのか? という例もあり、ナポレオン3世から現在の指導者まで名前が挙がるが、真反対の立ち位置なのに票を投じてしまうのは、仲間と思わせるトリック→共感が一因であるとハートは言う。

続いて民主的に共有されて管理される社会的な富=コモンが語られる。地球をコモンとして捉えて、気候正義に対する資本主義・所有することのの限界がナオミ・クラインの分析と共に語られる。自然を搾取掠奪し続ける資本主義では、気候問題は解決できないと。階級、ジェンダーエスニシティを越えた自然への償い・修復が必要だと論じている。

資本主義環境の中で教育されて来た今の私たちにはイメージしづらい理想を語っているようにも感じられる。けれど二酸化炭素削減に躍起になっている企業や国家が本当に考え直すべき原点は、追い求めていたのは結局は一部資本家の利潤に過ぎず、それが格差を拡大しているという現実ではないか。仕切り直して地球・自然とどう向き合うのか? 本来日本には厳しい自然の中でどうやって私たちの居場所を確保するかという知恵があったはずなのですが。