オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび456

佐々木幹郎「東北を聴く」を読む1

 


津軽三味線の二代目高橋竹山さんと東日本大震災の被災地を門付けして回る旅の様子が描かれる。津波で潰れた家の下から、老人が歌う「八戸小唄」が聴こえてきたという。阪神淡路大震災の時も辛い状況で「赤とんぼ」を歌っていたエピソードが報道されたけれど。ギリギリの状態で歌うとは・・歌には気持ちを落ち着かせる何かの力があるのだろうか?

「八戸小唄」はザザザンーで始まる多田武彦による男声合唱編曲が好きだった。さかえ男声でソロをやらせていただいたことがあって、メチャクチャ高い音に苦労した覚えがある。あの頃はスカスカなファルセットにならない裏声とかカウンターテナーモンテヴェルディを歌わせていただいたり、果敢に? できそうもないことにチャレンジしていたなぁ。

ところで洋楽の世界では、感激するとブラボーと叫ぶ人がいる。涙が出るほど感動したとか。それは結構なことだが、民謡の世界になると「寿命が3年延びた」と言うらしい。音楽批評などと言う構えたものではない生活感から出てくる賛辞なのだ。

南部牛方節は拍節感がわかりにくい曲の例として小学校の音楽の教科書に登場する。「西も東も金の山」という歌詞があるのだけど、初代高橋竹山によるとこれは牛追いの周りにたかるアブの音で、それがゴーンと聞こえて鐘の音→金の山になったのだという。

二代目高橋竹山から三味線の奏法について「糸一本一本に音色を入れる」と初代に教わった話が紹介されている。加速して叩きつけるような弾き方がウケるし、それが津軽三味線ブームになったのだが、本当はゆっくり弾く方がはるかに難しい。これは琵琶や他の楽器とも共通のしている真理ですね。