ゴードン・S.ウッド「アメリカ独立革命」を読む2
ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカは、アメリカ諸邦連合と訳すべきなのかもしれないが、日本にいるとホワイトハウスの動きばかりが報道されるので、中央集権的に見えてしまう。EU的な主権国家の結びつきの方が建国当時の実態に近いようだ。さらにアパラチア山脈より西、ミシシッピー川より東の広大な土地は、北西部条例によって東部十三邦の植民地とはならず、新しい邦として対等な仲間とされることになったのだ。これが従来の植民地主義・帝国主義と大いに異なるところだろう。
そろそろ独立戦争について触れよう。当時世界最強の軍隊を保持していたのは、グレートブリテン帝国であり、植民地のアメリカには常設軍などなかった。しかし、グレートブリテン軍は本国から3000マイルも離れた土地で兵站が困難であったし、しかも相手国には権力中枢となるような都市がないのだから、どこに攻撃を集中すべきかがわからなかった。対するワシントン司令官は、結果的にゲリラ的に小競り合いや襲撃を繰り返して、敵軍が攻撃力を最大限に発揮する機会を奪っていった。ワシントンの戦いは勝ったり負けたりの繰り返しで、彼は天才的な兵法家ではない。けれど彼の誠実かつ的確な判断が多くの人から信頼を得ていたこと、けれど反対にネイティブ・アメリカンに対して恨みでもあるかのように常に殲滅を目指したことは、あまり語られないが紛れもない事実だったのだ。