藪中三十二「世界に負けない日本」を読む1
始めに英語力の話が登場する。「中学3年生の英語の教科書を丸暗記していればそれでいい」らしい。ではその後も続く高校でのいわゆる受験英語や大学での英語は何だったのだろう?
ところで藪中さんは日本の大学を卒業していない。大阪大学の3年(3回)生で外交官試験に受かったので、中退しているのだ。だから藪中さんの最終学歴はアメリカ留学時のコーネル大学なのだ。この留学中の苦労が藪中さんの英語力の裏付けとなっているらしい。
筆者はグローバル社会で必要な資質として、第一にロジックを持つことを挙げる。具体例としては北朝鮮を巡る六カ国協議の冒頭で拉致問題についての発言例が出ている。そもそも六カ国協議は北朝鮮による核開発を話し合う場であり、拉致問題を話し合うために設けられた場ではない。そこで筆者は安全上の問題同様に北朝鮮の経済的な課題から日本からの経済支援には拉致問題の解決が不可欠であると言うロジックを持ち出す。他の国の代表から筆者の発言についてある程度の理解が得られるように捻り出された論理だ。外交官としての苦労の程がしのばれる。その後もイランの核疑惑に対する経済制裁、G8のシェルパを務めた時の苦労話、ASEAN諸国との関係を良好に保つための実話が本書を彩る。