オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび493

松井孝典/南伸坊「科学的って何だ!」を読む2

 


後半は教育談義になってくる。カースト制を受け入れながら暮らしているインド人にとって、ヨガや瞑想は格差を受け入れる手段であるなどと、すごいことを言っている。

教育のあり方ほど話題になりやすく、しかもそれぞれが自分の経験に照らし合わせて一家言持っているテーマはなかなかない。本書でも格好の餌食になっている感じだ。未だに教育現場にいて思うのは、マクロな国家単位の議論よりも個々に必要としているのは、どうやって目の前の子どもの成長をサポートし、さらには彼らに自由な未来を保障したらよいのか? という話なのだ。もう少し言えば、それは教え方や内容よりも、どうやって子どもの気持ちを揺さぶり、ワクワクドキドキのモチベーションを引き出すかということだろう。

後半の方で、欲望を抑えるための宗教の役割について語っている。先のカースト制度も当てはまると言う。分を知る、足るを知る、欲望より快楽などの言葉が飛び交うと、ボクは古代ギリシャの快楽主義者エピクロスのことを思い浮かべていた。私たちが想像する欲望に身を任せた快楽主義ではなく、彼と彼の周囲の生活が大変つましかったことを。

金融市場の拡大、軍備の増強、刺激され続けることでとどまるところを知らない私たちの欲望、それらを可能にする科学の発展・・どうしたらいいか? この対談でも楽観的な未来は語っていない。ただ最終章で松井先生が、ハスやスイレンの起源に興味をもち、調べているエピソードが出てくる。知的好奇心のありかは、いくらでも探すことができる。ひたすら追い立てられている労働者人生や、ただ踊らされている消費者生活からドロップアウトする道はその辺りにありそうな気がしました。