春野草結「歩いて旅する 熊野古道・高野・吉野」を読む2
実際に熊野古道を歩くハイカーが携行するために編まれた本なのですが、自分は観光バスで楽チンかましているツアー客でして、あっ、ここを歩くとこんな感じなのか! という読み方です。
最初はお伊勢さん。実は伊勢参りは初めてでした。聳える巨木に圧倒されつつ、いかにも神様たちが悠久の時を経て、あちこちに住まわれていそうな空間を体験してきました。ガイドさんがとてもゆったりした方で、せかせかした日常のリズムをシフトダウンして神宮の中を回ることができたこともよかった。伊勢神宮の中には、125柱の神様が祀られている。正殿の後に、荒祭宮にお参りしたのだけれど、天照大神の荒魂をお祀りしている。心や精神のあり方のうち、勇気や創造に関わる荒魂のみを別宮として正殿近くに祀られているのは、なぜだろうか? 元気を分けていただけると多くの人がお参りされているようだ。
ところで、一日目は那智勝浦泊なので、バスは伊勢から一路高速をひた走る。険しい山々をトンネルで突き抜け、谷を高架橋で渡る。ガイドブックでは、この区間を熊野古道の伊勢路として紹介しているけど、この険しい山を登っては下りを繰り返しながら、熊野へ向かった人々の苦労は並大抵ではなかったことだろう。バスは大泊で高速から一般道へ。そして獅子岩を望みながら海岸線を走り始める。海岸線は急になだらかになり、往時の旅人も優しい海の風景に心に安らぎを感じたことだろう。
桟橋に亀の姿をした船がやって来てホテル浦島へ渡る。話のタネにと洞窟風呂の忘帰洞に入ってみた。潮騒が洞窟に響く風呂は、目の前が大海原。泉質もやさしく感じ、往時の来客が帰りたくなくなったのも無理はない。