オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび524

佐藤優「君たちが忘れてはいけないこと」を読む

 

授業は、生徒たちから事前に質問を受けた論点を元に、あちらこちらに枝葉を広げながら、展開されていく。

共産主義は潜在力を使い果たして失敗したけれど、ファシズムには、まだポテンシャルが残されていると警戒心を込めて言う。挑発的立ち位置であるが、だからこそ民主主義の課題に対して著者の舌鋒鋭い言動から目を離せない人がいるのだろう。

One for all All for one. 日本語では「みんなは一人のために 一人はみんなのために」とか言っているけれど、このフレーズはファシズム下のイタリアで生まれた言葉だったんですね。ファシズム=ヒトラーで置き換えておしまいではないのです。何とF・ルーズベルトの政策をファシズムと紹介している解説本があるという。

また生徒たちとの対論の中で、人権の対語は何か? と問いかける場面がある。著者の答えは神権。さすが神学部を出た人という気もするけど、日本は一神教の国じゃないから人権思想が根付かないと言われるとボクは考え込んでしまう。

さらに著者は元外務官僚であり、海外の知識人と渡り合ってきた。(=外務省のラスプーチン)その経験を下地に生徒たちに国際関係や日本外交の現状を少々悲観的に語っている。

別の論点では、AIとの向き合い方についてシンギュラリティなど何も心配することはないと。所詮コンピューターは演算装置なので、五感+感性というセンサーを内蔵した人間と比べることはできないと述べている。(そのためには読解力を始めとして、身につけておかなければならない力があるのだろうけど)

最近のチャットGPTとの関わり方にあたふたしている人々は、この慌てることのない姿勢をどう感じるだろう?

著者は、いわゆるエリートに期待しているし、指導者に必要な知識・学習の大切さを説いている。だから本書は、国家に操作される側の一般大衆=本書の言葉を使えば偏差値50前後ゾーンのオヤジ目線からは、少し読みづらいところがあったけど、ボクは別にこれからエリートを目指すわけでなし、まぁよしとしましょう

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