オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび527

ジェームス・M・バーダマン、村田薫「ロックを生んだアメリカ南部」を読む1

 


本はエルヴィス・プレスリーの物語から始まる。サム・フィリップスのスタジオで「ザッツ・オールライト」を歌った時=初めてのレコーディングの様子がいきいきと語られる。そのすぐ後に、オーヴァトン・パーク・シェルという野外劇場でライブ演奏があった。エルヴィスは緊張のあまり震えていた足を音楽に乗せてさらに震わせて歌った。身体全体を使って歌う黒人音楽の影響だが、この下半身のセクシーな動きが多くのファンを熱狂させ

ていくことになる。

アメリカ音楽のルーツであるブルースを、憂鬱な音楽と紹介するのは、あまりに短絡的で乱暴な話です。誰がどこでどういう状況に置かれなぜ憂鬱だったのか? どこで? について本書は二ヶ所紹介している。一箇所目は黒人たちが憂さを晴らす場所としていたジューク・ジョイントという店。酒を飲み歌い騒ぎ踊り、異性を誘う、そんな場所からブルースやジャズが生まれた。土曜の夜にそこに集まっていた人は、日曜日には教会でゴスペルを歌っていたのだ。もう一箇所、バーチマン刑務所農場。受刑者は恋焦がれる女性や年に5回第五日曜日に夜行列車で来る家族を思い歌った。差別でがんじがらめにされた現実の前で、歌以外に自己表現の術はなかったから。

f:id:hoihoi1956:20230426060034j:image