ジェームス・M・バーダマン、村田薫「ロックを生んだアメリカ南部」を読む2
ジャズが生まれた街ニューオーリンズ。この街の成り立ちと黒人が集まる場所=コンゴ広場について語った後、ピアニスト・ゴットショーク(←本書の表記)が紹介される。YouTubeで彼のピアノ曲「バンジョー」を聴いてみた。耳を澄ますと最後の方でフォスターの「草競馬」が聴こえてくる。パリ音楽院では門前払いを食らったもののショパンやリストが認めた才能の一端がわかる。何と言っても楽しさに溢れている音楽なのです。
好きな音楽を仕事にして収入を得て生活できたらいいなぁ。音楽好きなら誰もが夢見る生活が、120年前のニューオーリンズでは奇跡的に手が届くところにありました。そしてバディ・ボールデンが登場します。
少し寄り道になりますが、楽器演奏あるいは楽譜に基づいた歌(例えば合唱)をしてみたいと思ったら、楽譜を読めるか読めないか、これがハードルになる場合があります。ニューオーリンズで生まれつつあったジャズバンドも、楽譜を読める有色クレオールグループとそんなものはお構いなしに吹きまくるグループが合わさっていたのです。
そしてこの街から、ルイ・アームストロングが現れる。始めはストリートでヴォーカルカルテットを歌っていたが、空砲を撃ったことで黒人浮浪児施設に送られてしまう。ところが世の中何が幸いするか、わからない。ルイはこの施設のブラスバンドで音楽の手ほどきを受けたのだ。それだけではない。文字の読み書きも習得したおかげで、私たちは今日彼の残した文章を読むことができるのだ。さらに遊覧汽船上の演奏に参加する中で楽譜の読み方を学ぶ。演奏する音楽の範囲をずっと広げていったのだ。
人との出会いを通して生き方が変わることがあるように、音楽との出会いも人生を変えることがある。ルイ・アームストロングの青春はそれを象徴している気がします。