オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび531

ウスビ・サコ「アフリカ人学長、京都修行中」を読む

 


京都特有の本音をストレートに言わず、極めて婉曲的な言い方を著者は京都コードと言う。著者がこの言い回しに苦労した様子が語られる。明日香、奈良、京都と並べて、結局訪れる回数は多いのだけれど、ボクが一番馴染めないのが京都です。明日香も奈良が都であった時間に比べて、桓武天皇が移した平安京は1230年弱の歴史があり、今もなお大都市で先祖代々ずっと住んでいる人々が大勢いて古都独自の文化を守っている。この京都の人と熟成された文化が、単細胞的な生き方をしてきたボクには馴染めないのかもしれない。

日本史上最高の立ち位置にある天皇陛下に対して「天皇さん」などと馴れ馴れしく呼ぶのは京都人だけで、東京の皇居は未だに仮住まいだと思っているのだろう。上皇様に「お帰りなさい」と言うのは古都に生きる人のプライドなのだろうか?

京都には、伝統を守り受け継いでいる人々が数多くいる。ご先祖様、親世代から自分へ。まち景観を守る取り組みとして「姉小路界隈式目」を紹介している。まちで生まれ育ち、暮らし続けるための知恵の最大公約数が盛り込まれている気がした。なりわいと言う単語が多く使われているのは職住一体となった生活を象徴しているようだ。

和傘屋さんに入った婿養子西堀さんの話が出てくる。廃業寸前の店がネット通販で息を吹き返したのです。伝統は革新の連続だと。その後和傘の技術を使って、ランプシェードを開発し海外展開に発展していきます。

本の表紙には著者が烏帽子をかぶり平安貴族の装束で写っている。北野天満宮の曲水の宴に招かれた時の画像らしく、そこに至るいきさつが京都北ロータリークラブとの関わりの中で語られている。職業とコミュニティの役割は違う。勤め先と自宅の往復に人生の多くを費やしてしまった人々の居場所は地域コミュニティにこそあるのかもしれないと感じました。

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