オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび533

馬忠雄 「プロレス酔虎伝」を読む

 


題名でわかるように、酒をこよなく愛するプロレスラーたちのエピソード集です。ボクシング担当からプロレス記者に担当替えを命じられた著者は、プロレスラーに接近するために、とにかく一緒によく飲んだ。そこでオナラが原因のセメント試合やとんでもない鼾の話が、面白おかしく語られる。プロレスラーは体格体力以外も規格に収まらないようだ。

長沢秀幸という地味なレスラーが出てくる。タイガーマスクの得意技ローリングソバットのソバット=裏蹴り技を初めて使った選手だ。ボクは本書で初めて長沢選手の名前を知ったのだが、彼がカラスに襲われて弱っていた時の会話がきっかけで門馬記者と親しく話すようになったと言う。彼はウォーキングつまり徒歩でいつも試合会場入りしていた。歩くことだって柔軟体操! と説く。なるほど「脚は外部の心臓」なのだ。

記者ですから定番の「プロレスラーで一番強い人はだれですか?」という質問を数多く受けてきたことでしょう。最も無難な答え方「プロですからお客さんをいっぱい入れられるレスラーが一番強い。」で返していたそうです。馬場は底なしだが、甘党なので滅多に飲まない。猪木は旨い高級ワインが好き。おそらくはプロレス同様、酒量でも誰も敵わないアンドレ・ザ・ジャイアント。前座から中堅、脇役、様々なレスラーの酩酊した姿が語られる。キラー・カーンの俵屋玄蕃なんか見てみたいなぁ。本書の表紙は、酔いつぷれた筆者をアンドレ・馬場・猪木・上田・藤原が取り囲んでおり、右下にパンツ一枚でひっくり返っているのが藤原。何とこの絵は関節技の鬼=藤原喜明の作品だったのですね。

どうしてもスター選手やチャンピオンが目立ってしまうのはプロレスに限ったことではないけれど、リングマットから離れたレスラーたちの素顔・人間模様・奇行の数々は、一昔前のプロレスファンを十分に楽しませてくれました。

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