オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび535

岩田光央「声優道」を読む

 


著者の名前を聞いてピンと来ない方は、大友克洋AKIRAで主役金田正太郎の声を演じた人と言えば、通じるだろうか? 

教え子がプロダクションに所属していたことがきっかけで、芸能マネージャーと挨拶をしたことが一回だけある。その時名刺に刷られていた俳優の名前が凄かった。テレビドラマを観ないボクでさえ名前がわかる有名なタレント揃いだったのです! そう言えばその前の個人面談で母親が「今事務所選びに奔走している」と言っていた。何のことやらわからなかったけれど、事務所の力が凄く影響する世界であることは、その後も、そしてこの本でもよくわかった。本書の前半は、声優で生活していけるだけの収入を得ることがいかに困難なことか、声優を志望する若者たちにその覚悟があるか? と問いかけている。

自己観察そして原稿の読解とイメージの重要性、どのようなシーンを誰に向かってどのように語りかけるのか? 行間をどう感じるのか? 声優のパフォーマンスは演劇に近い気がするけれど、同じように自在な音表現が音楽にも当てはまる気がします。

「発声は歌ってはいけない」と筆者は言います。理由は、節回しを付けた発声はとても楽だから。ここはボクのように音楽に軸足を置いている人間には目から鱗です。それほど一語一語に対して軽く流さない姿勢が大切なのでしょう。

最近カラオケで持田香織の声に変換されて歌える機械が開発された。こんな声で歌いたいという憧れを微妙に刺激する仕掛けなのだろうが、子どもに接していると初音ミクのような合成音声を好む子が増えている。ニュースでさえAIが原稿を読み上げる時代になったけれど。生の声、オリジナリティーのある声のよさをボクは信じたい。旧世代オヤジの呟きは、常に声の引き出しの数を増やす努力を求められる声優さんの思いと重なっているのかもしれない。

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