オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび658

片野ゆか「動物翻訳」を読む1

 


プロローグを読むと、変化のない単調な生活を送っていると飽き飽きしてしまうのは、人間も動物園の飼育動物も同じこと。環境エンリッチメントという飼育動物の幸福な暮らしを実現するための方策が模索されるようになったとあります。

はじめに登場するのはお馴染みのペンギン。日本は世界で最も多くペンギンを飼育している国なのだそうだ。ペンギンと言えば南極の氷の世界を思い浮かべるが、フンボルトペンギンは自然豊かな島に営巣している。動物園の中に島の自然を再現しよう=緑のペンギン島!と言う世界初の試みが紹介される。

可愛らしいのは、長野から埼玉へ移送されてきた卵が孵ったエピソード。ヒナの名前はペンペン。私の息子がまだ幼い頃「ペペンのペン太郎」という漫画を描いていたっけ。

ペンペンは飼育員さんを親であると刷り込んでいる。それゆえに行動が独特だ。唯我独尊的とでも例えたらいいのだろうか。その様子を丹念に観察しながら愛情を注いで育てている。人に一人ひとり個性があるように動物にも、もちろん個性がある。そして間合いというか適当な距離を測りながら、成長を見守る飼育員さんの姿に、学ぶところ大でした。

 


続いて、日立市の動物園にチンパンジーの群れをつくるプロジェクトの話。チンパンジーは霊長類ヒト科の動物で、研究者は個体を何人と数えるのだそうだ。ヒトに近いだけに人間関係ならぬチンパンジー関係も、どこかで経験したことがあるような強弱・好き嫌い・いじめ・・のような関係が描かれている。しかし、5歳くらいまでショーのタレントとして活躍していた個体の性格には、明らかに人間のご都合によって振り回されてきた過去が投影されている。

出産しても育児放棄してしまうヨウというチンパンジーに、育児トレーニングをする話が出てくる。出産後赤ちゃんを抱こうとしないヨウに何度も抱き方を教える飼育員。ほとんど諦めかけていた3週間め、とうとうヨウは赤ちゃんを抱いたのだ! このシーンは何だか感動的でさえある。人間のショービジネスにまみれ、本来の性質を置き忘れていたヨウが母親としての本能を取り戻したのだ!

幼少時に大自然から離され、人間の都合に振り回されてきたチンパンジーは、体力的に人間を上回り、手に負えなくなると動物園に引き取られる。けれど辛抱強く本来の姿に戻ることは不可能なわけではないのだ。

この投稿、明日に続きます。

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