橋場弦「古代ギリシアの民主政」を読む3
アテナイを細かく分割された単位が区。この区に区民会という会議があり、国家レベルで論じられる軍事・外交以外の生活上のほとんどの問題が論じられていました。国との関係は大きな歯車と小さな歯車の組み合わせで考えるとわかりやすいと筆者は言います。
中央集権制で国に決めたことがトップダウンで地方から各地域へと指示されている現代の国家とかなり様相が違います。
無頭性。リーダー・代表を置かずに「順ぐりに支配し、支配される」関係。市民一人一人が武装し、警備が必要な場面は異民族の国有奴隷である弓兵が担う。
ソクラテスは「国家の歳出歳入額、陸海軍の現有兵力、鉱山の採掘高、穀物の供給量を常に把握しておかなければならない」と弟子に語っていた。そのような公的情報を得る手段が民会だったのであります。さらにアゴラ(広場)の西側に掲示板があり、次回民会の予告と議題、遠征兵士の召集氏名、民衆裁判所の公判日程が知らされていた。公的情報は絶えず開かれていたのです。さらに碑文に刻むやり方では限界が生じてくると、公文書館にさまざまな文書が保管管理され流ようになっていた。記録に賭けるアテナイ人の几帳面さはすばらしいです。
古代ギリシアの民主政について読んできました。主権在民とはいえ、代表に委ねる議会政治や職業としての官僚が国の実務を担う行政が当たり前の世界に生活していると、古代アテナイの「順ぐりに支配し、支配される」関係は実に新鮮です。権力が長い期間に渡り一部のグループに集中しないように、アテナイの人がどれだけ気を遣っていたことか。
アテナイの人々の政治感覚に学ぶ点は多いと感じました。