ロベール・フォルツ 大島誠編訳「シャルルマーニュの戴冠」を読む2
世界史のおさらいです。ローマにはカトリック教会の頂点に立つ教皇がいらっしゃる。一方ローマ帝国は、テオドシウス1世の時に皇帝がコンスタンティノープルに移り、ビザンツ帝国とか東ローマ帝国と呼ばれた国になる。西ヨーロッパへの影響力はどんどん弱まっていき、ローマ帝国が東西に分かれたと学習する。その後数百年が経ち、ガリア・ゲルマニア・イタリアを統治する王、シャルルマーニュが登場し、戴冠式を経て西側の皇帝になるわけですね。
最近日本でお札の肖像が新しくなりましたが、戴冠式後シャルルの顔も早速コインになります。波風が立つのはビザンツ帝国側のイレネ女帝側でして、突然もう一人の皇帝(しかもゲルマンという異民族から)が現れたのだから、そりゃ面白くない。しかし、この問題解決に武力を行使しないという方針は、シャルルマーニュもイレネも同じで、実現しなかったが何と皇帝同士二人の結婚話まで計画された。
両雄並び立たずというべきか、結局はヴェネツィアやダルマティア(クロアチアの一部)で武力衝突が起きてしまう。シャルルマーニュは同地方を放棄する代わりに、東ローマ側に皇帝の称号を認めさせた。
本書は、シャルルマーニュという英雄の死後、カロリング朝すなわちシャルルマーニュの子孫と大帝国のその後を追いかけている。帝国自体があまりにも大きいので、子孫たちはその遺産を持て余してしまったように思える。卓越した政治力を発揮し、西ヨーロッパに覇を唱えたシャルルマーニュの国はやがて分裂を繰り返していくのです。
最後にこの本はドキュメンタリー・フランス史の一巻でして、フランスこそがフランク国を継承している国であり、西ローマ帝国の再興= シャルルマーニュの戴冠がフランス王国の成立に深く関与したという後世への影響を記しています。また叙事詩「ローランの歌」を通して、長く人々に語り継がれていった一代の英雄の残像にもふれています。
過去の英雄の業績と自分の地位を系図的に結びつける傾向は、日本でも統治者が源氏か平家のいずれかと繋げたかった様子と似ていますね。