高遠弘美「物語 パリの歴史」を読む2
本書の中でも、かなりの分量を割いて書かれているのが、フランス革命とその後のナポレオン。思い出せばフランス革命を「やばい」と感じた周辺国がちょっかいを出そうとして、逆にナポレオンに攻められてしまったのでしたね。
第二共和制の後に登場したフランス最後の皇帝ナポレオン3世の生き様も波瀾万丈でおもしろい。本書は現在のパリがいかにしてできたのかについて語っているのですが、その中でナポレオン3世の指示によって造られたものがとても多いことがわかります。中央市場、道路、下水道、ガスなど、彼のパリ改造計画は失業者を減らすことに結びつきました。「国民主権を標榜する皇帝」という絶対主義的な王様像とは一線を画していたのです。
さて時代は一気に現在に近づけます。ボクが子どもの頃、フランスのリーダーはド・ゴールでした。20世紀フランスの最大の政治家と言って構わないでしょう。パリをナチスから解放して、さらにはフランスの独立を勝ち取った立役者です。しかしその後の議会選挙でド・ゴール派が敗退し第四共和制か成立すると、ド・ゴールは辞任します。
その後アルジェリアとの戦争を機に、ド・ゴールは大統領に復活。新憲法を国民投票で承認させ、第五共和制が始まります。1969年までド・ゴールは大統領を務めます。
外交的にはド・ゴール主義として、フランスが様々な同盟関係から一定の距離を取り、独自の路線を歩む思想に結びついて、のちのシラク大統領にも影響しているでしょう。学生運動(5月革命)が辞任の引き金と言われていますが、その後直後の議会選挙では圧勝しています。金高騰によるゼネストと政治制度改革を問う国民投票で過半数を割り込んだことで、大統領職をポンピドゥーに譲ります。
強大な権力者でありながら、常に民意を気にかけているところが、どこかナポレオン3世と通じる気がします。