杉崎泰一郎「修道院の歴史」を読む1
有名なミュージカル「サウンド オブ ミュージック」や「天使にラブソングを」には、修道女が登場する。そして修道院の厳しい戒律に馴染まない女性や身を隠すためにやってきた女性が主人公なのだ。
そもそも厳しい戒律とは、何なのか。ど素人の私はそこから読み始めなければなりません。本書第二章に、現在まで伝わるスタンダードと言ってよさそうなベネディクトの戒律が紹介されています。暖衣飽食の生活を満喫している今の日本人からすると、かなり禁欲的で、全てに節制が求められる生活がイメージされます。仏教でも修行中の僧侶が欲を断ち切り節制した生活を送ることに似ています。仏教はお釈迦様の修行を自分も擬似体験しているのでしょうが、教会では神のために自分の生活を全て祈りと労働に捧げるのです。
聖務日課は15分刻みで定められていますが、一年のうちどの日にどのような祈りが捧げられて、聖歌が歌われるのか決まっていたようです。聖歌はやがてグレゴリオ聖歌と呼ばれ、西洋音楽の礎を築いていくわけです。ただここで私たちが勘違いしてはならないのは、初めに音の流れ=旋律ありきなのではなく、あくまでも祈りの言葉が優先であり、その文節に抑揚が付けられていると捉えた方がいいということです。
最も大切な日課にミサがあります。話はどんどん逸れますが、大学グリークラブで演奏会用にミサ曲を歌っていました。少し調べてみるとクラシックの大家は皆様ミサ曲を書いていること、さらには教会や修道院のための聖歌を書いている作曲家もたくさんいることがわかってきました。テキストが祈りの言葉なので、キリスト教の信者として曲を捧げるのは自然な成り行きだったと思われます。
奈良時代のお坊様が、漢字で書かれた梵語を理解していないとお経が読めなかったように、ラテン語が読み書きできなければキリスト教の詩篇がわからなかっただろう。そこで修道士への文字教育を推進したのがカール大帝と補佐役のアルクイン。カロリングルネサンスです。修道院はやがて文化的な発展の一翼を担うことになるのです。
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