福永文夫 「大平正芳 戦後保守とは何か」をkindleで読む。
永い人類の歴史を通して、われわれの先人は、いつの時代においても苦悩と苦闘を重ねてきたのです。何度も何度もその改革を試みては失敗してきたのです。たまに改革ができたと思って喜んだ瞬間、また新たな苦悩ができ、みんなが幻滅に泣いたのです。われわれは、こういった苦悩の深淵にいつも生きておったし、今後もそれから脱却することはできないと観念するより他に道はないようです。
この「変革と対応」と題した文から、ボクは詩人丸山薫の「新しい時代に」の一節を思い浮かべる。
希むらく 新しい時代に生きん 新しい歎きに泣き 悩みを悩もう その歎きと悩みの上に ひとすじ真実の橋をかけよう
大平正芳の思想を語るのなに欠かせないのが「楕円の哲学」。それは横浜税務署長としての着任挨拶の中に見られる。ちなみに上司池田勇人との出会いもこの時期でありました。
大平にはものごとを考えるとき、互いに相反する二つの中心を対峙させ、両者が作り出す均衡のなかに調和を見つけようとする態度が終生一貫して見られる。課税者と納税者、すなわち治者と被治者との関係において、いずれにも偏することのない「中正」の立場を説いた。それはのちに「楕円の哲学」と呼ばれる大平の人生哲学・政治哲学の最初の吐露であった。この思索と行動の体系はまた、一面で機の熟するまで待つ、「待ちの政治」という彼の政治スタイルを生み出していく。
大平正芳の考えていた保守とは・・
現在は、未来と過去の緊張したバランスの中にあって、革命であっても困るし、反動であってもいけない。未来と過去が緊張したバランスの中にあるように努めていくのが、「健全な保守」というものではないだろうか。私は保守主義をこのように考えている。
哲学者田辺元の影響を受けているとされるこの言葉は、政治家である前に人として今をどう生きるべきかを語っているようです。
明日の投稿に続きます。