オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび716

鈴木るりか「さよなら田中さん」をkindleで読む

 

小学校6年生の女の子、花実さんの話。最後の一編だけが同級生の男の子目線で描かれている。作者は小学校4年で、12歳の文学賞に応募し、3年連続で大賞を受賞する。

幼児の絵に、その時その年齢でなければ描けないタッチが見られるように、物語も小学校6年生からそう離れていない年齢で書かれた作品には、その年齢ならではの感覚や言葉遣いが広がっている。

重松清さんが、少年少女の心理を巧みに描くが、おそらくは体験による回想を基盤にして書いている。しかし、鈴木るりかさんはリアルタイムなのだ。現在自分の周りで起きていることがそのまま物語になる。そんな作家とお見受けしました。小説だから身の回りで起きたことに羽が生え尾鰭がつき、ミミズがドラゴンになるかのように巨大化する。でもその想像力が鈴木さんの場合は大人の作家のようなわざとらしさが透けて見えないのだ。読んでいてそれがピュアに感じる。

 


主人公はの家は母子家庭だ。貧しくとも明るさと逞しさを失わない母親の姿が、作品にエネルギーを与えている。しかし同時に貧しさに対して、以前はみんなで共有できていた感覚が、それぞれの家庭の経済状況によって差が開いてしまっていることにボクは想いを馳せる。一億総中流という化けの皮が剥がれた2000年以降、貧富の差は生活の中にしっかり根を下ろしてしまった。ディズニーランドとおぼしき遊園地に友だちといっしょに行けず自販機の下から小銭を漁る姿は、やはり寂しい。

勝ち組だとか負け組だとか情けない偏見は、お母さんの豪快な笑い声と共に、空の彼方へぷっ飛ばしてしまいたい。そんな鬱憤がこの本を読むと少し浄化される。ベストセラー宜なるかな

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