石井哲代「102歳、一人暮らし」を読む
日々の生活、つまり当たり前の日常を感謝しながら生きる。
畑で育てている作物の成長、自分の生活をサポートしてくれる姪っ子さんへの感謝、仏壇に手を合わせて今の自分を亡き夫に報告する。おいしい食べ物が大好きな石井さんの食事時の表情は、笑顔に満ち溢れている。
そんな楽しいことばかりじゃないでしょ。後悔したり悲しい気持ちになることもあるでしょ。ほとんどの読者はそう思うはず。
ボクは、石井さんはきっと悲しみや辛さのしまい方・片付け方が上手なのだと思う。
石井さんが講演会で語った「生き方じようずになる五つの心得」をメモしておこう。
一、物事は表裏一体、良いほうに考える。
ニ、喜びの表現は大きく
三、人をよく見て知ろうとする
四、マイナス感情 笑いに変換
五、手本になる先輩を見つける
誰もが心豊かに幸せに生きたいと願っている。でもみんな置かれた環境や求めるものが違うから生き方に正解なんてない。
けれど哲代おばあちゃんの日記は、日々忙しさに追われる中で、力まない等身大の暮らし方があることに気づかせてくれる。
二度の入院を終えたあと、こんなことを書いていらっしゃる。
「同じく一生から機嫌よう生きていかんと損じゃ。」
以下哲代おばあちゃんの言葉から
「心はお月さんのようなもんです。満月のように輝きたいが、私のは三日月のようにちいと欠けとる。弱いところを見せて、いろんな人に助けてもろうて、満月にしていこうと思います。」
哲代おばあちゃんは五ヶ条がお好みのようでもう一つ出ていました。
私らしくいるための五ヶ条
一、自分を丸ごと好きになる
二、自分のテンポを守る
三、ひとり時間も大切
四、口癖は「上等、上等」
五、何げないことをいとおしむ
本書の編集に携わった記者二人が、あとがきに「とにかく全力で生きている人」と書いていました。きっとその全力の意味はただ一生懸命ではなくて、その時の自分に誠実であるという意味でしょう。
哲代さんは小学校の先生をしていた人だけれど、今は小学生だけではなくて、読者すべてのお手本になっている、やはり先生なのですね。