草薙龍瞬「反応しない練習」を読む
世界中がインターネットから溢れ出る情報に頼っているし、振り回されてもいる。某国の大統領が発信している情報など最たるものだ。
その中でお釈迦様の言葉を足場にしながら、冷静に合理的な生き方を選択するとはどういうことなのか、本書は説いている。
手塚治虫の漫画全集「プッダ」12巻35頁よりアナンダの科白
「あらゆる苦しみはかならず原因から生まれる プッダはそれらの原因を説き明かされる・・あらゆる苦しみはかならずとめることかできる プッダはそれらのとめる方法を説き明かされる・・」
手塚治虫版のプッダにも散りばめられている教えが、本書で説かれている教えと被るのは、やはりお釈迦様の教えがベースだから当然なのか。
話を本書に戻して、163頁。「この世界は、闘いと、言い争いと、心配事と、悲しみと、「わたしがいるぞ」という慢心と、傲慢と、誹謗中傷に取り憑かれている。やがて必ず喪失にたどり着くさまをみて、私は空しくなった。」
スッタニパータからの引用は他にもたくさん出てくるが、競争について語っている章に上の言葉が置かれていることは象徴的です。
勝ちたいという欲が作り出した「競争」という妄想から「一度目をつむって」そして「目を醒まそう!」と筆者は呼びかけています。
慈しみの心は、相手の幸せを願う心。悲の心、喜の心は相手の苦しみ・悲しみ・喜び・楽しさを理解する心。捨の心は欲や怒りを捨て置いて反応しない心です。これら四つの心がけを意識しながら「みんなよく頑張っているな」と人々の苦しみを思いやり理解することで、自分自身を苦しめている競争から自由になると言うのです。
最後に「わたしは、老いゆく心を、老いのない心へと変えよう。苦悩する心を、静かな心へ、安らぎへ、最高の納得へと変えていこう」という言葉が掲げられています。「納得の境地に、きっとたどり着ける」と人生を信頼する大切さを説いています。そしてそれは「反応してしまう心」しか持っていないからであると本のタイトルに帰るのです。
本書は、不安と苦悩のネタが尽きない現代人=ボク自身にとって、心のあり方をリセットしてくれる内容でした。