長谷部誠。サッカー日本代表キャプテンとしての活躍と実績はとても有名ですが、実際のプレーはテレビカメラが追いかけていないところで地味にコツコツ動いていることが多かった選手だと感じています。
本書は、長谷部選手が未だ現役バリバリの27歳の時に書かれた本で「キャプテン・ハセべ」の成長過程が読み取れる本でもあります。
56章からできているのですが、第35章に「監督の手法を記録する」というのが出てきて、「引退したら、いつかサッカーチームの監督をやりたい」と書かれている。長谷部選手が現在フランクフルトや日本代表でコーチを務めているわけで、随分前から自分の将来を見据えていたことがわかります。
41穣「常に最悪を想定する」は、W杯パラグアイ戦でPK戦にやぶれたとき、いち早く長谷部選手が立ち上がり、GKに歩み寄っていった話。他のチームメイトが泣き崩れている中、なぜ彼だけが冷静でいられたのか?
42章「指揮官の立場を想像する」は、日本代表を率いる岡田監督の孤独感に想いを馳せた文章。個人的にボクは岡田監督のクールな采配ぶりが好きだし、古河電工の頃からゲーム全体をコントロールする活躍をしていたことを知っている。けれど時に冷徹とも思える決断を下したことが、一部のファンから快く思われなかったことも事実でしょう。岡田監督を長谷部選手がどう見ていたのかが、わかる文章です。
55章は「日本のサッカーを強くしたい」。釜本・杉山以降、元気がなかった時代を知っているボクは、すでに十分強くなったと言いたい。現にこの原稿を書いている今日、日本は他国に先駆けてW杯進出を決めてしまった。長谷部さんが見ている日本サッカーの未来は、きっとヨーロッパや南米と互角以上に戦えるチームなのだろう。そんな夢物語のような話も手が届くところまで近づいてきている気がします。
堅物ハセべらしい話が続くのですが、最後に若手にイジられているエピソードで締めているところが、何だかホッとさせられます。「ご飯粒を茶碗に残すんじゃない」という相方に「おまえはハセべか!」とツッコミを入れるのです。
さもありなんと思いますが、彼のひたむきさこそがまれに見る名キャプテンとしての真骨頂なのでしょう。