瀧本哲史「武器としての決断思考」
本書は授業形式になっているのですが、1時間目の終わりの方で「ブレる生き方を目指せ」とあります。初志貫徹、思い込んだら試練の道を〜♪的な生き方が礼賛されていた時代に育った者としては、大きな変わりようです。そのブレ方も脊髄反射的に変化するのではなく、事前の準備や根拠が必要だと言います。
著者のイチオシは、ディベートです。大きな問題から具体的な問題(3つくらい)へ。そしてYesNoに落とし込めるところまで進めていきます。その後ディベートを通じて、論理的に隙がない説明力を身につけるかが、語られていきます。
私なりに咀嚼すれば、この本は「流されない」「騙されない」ために必要なスキルがたくさん詰め込まれています。詐欺の誘導、株取引・金融商品に対する噂、政治に関するデマ・・それら私たちを惑わせる情報に対して、強力な防衛力を身につけるために本書は役に立つに違いありません。
以前オウム真理教の情宣担当者が、詭弁で人を翻弄することに長けていて、その背景にディベートを学んでいた経験があるとされました。我が国の国語教育にディベートを導入しようと考えていた人々にとっては、由々しき事態だったわけです。そんなことも思い出しながら読んでいました。
1972年生まれの著者は、2019年に亡くなっているので、新刊本は今後もう出ない。
騙されない人を目指して、説得力を高めるために、警鐘を鳴らし続けた本書を繰り返し読んでいくしかないのでしょう。