上野千鶴子「最期まで在宅おひとりさまで機嫌よく」
本書では至る所で介護保険の活用が説かれている。ボクの母親も利用中なので、この制度が整ったことは本当にありがたいと思う。
またボクは父親があっという間に旅立ってしまったので「老いて弱っていく姿を子どもたちに見せる」という発言は、ボク自身も老いの入り口に差し掛かっているので、結果的にそのような状況になれば親として子どもに残す最後のしつけ(教育)になるのかもしれない。
本書に登場する方は全員女性であり、結婚歴・離婚歴がある方から、生涯独身を貫いている方まで様々。ボクは男であり妻より少しだけ年長だから、自分が先に旅立ってしまう可能性が高い気がしています。残された妻は、残された人生をどう送っていくのだろうか、そんな想像も働かせながら読み進めました。
お医者様の村松さんとの対談で「バケット・リスト」という言葉が出てきた。将来やりたいことをとりあえずバケツの中に放り込んでおくらしい。ボクの体験と重ね合わせれば、人生やり残していることは何かないかなぁと考えていたこととダブります。何かを起動するためにはエネルギーが必要で、またほどほどに自分自身が納得できるレベルに進むためには、ある程度の修行期間が必要なジャンルもあります。ボクの場合、薩摩琵琶はバケツの奥の方から探し出した趣味なのですが、ゼロスタートだったので、修行期間がずっと続いています。
老後の人生に必要なことが二つ。きょうよう=今日用事がある。きょういく=今日行くところがある。これらについては、女性の方が断然アクティブに見えます。男性は濡れ落ち葉という言葉があるように、少々情けない。
金持ちに対比する言葉として「人持ち」という言葉が登場します。どのような人と関わりながら生きていくかは、高齢者に限らない課題のように思えます。
最後に上野さんは「介護保険制度が危なくなってきている」と警鐘をならしています。少しでも社会保障費を抑えようとする政府の魂胆が見え隠れしているようですが、機嫌のよく老後を過ごすためにも、制度の改悪には目を向けていきたいと思いました。