岸山真理子「ケアマネージャーはらはら日記」を読む
読む前の予想が困った意味で当たってしまう。経験に基づいている個々のケースは、ハッピーエンドに収束しない場合もありのままに書かれている。これが福祉介護の現実であると訴えかけるように問題は未解決な要素を地下水脈のように潜伏させている。
様々なケースが語られているが、一つひとつのエピソードにそれぞれの人生が横たわっている。そこでは成功体験とか勝ち組とかの反対側で生活している人々の生き様が語られている。
オヤジのあくび728で書いた上野千鶴子さんの言うように、介護保険制度が大きな救いとなっていることがわかるし、当のボク本人が母親の支援介護で厄介になっている。
しかし実際には、現場に携わるケアマネジャーやヘルパーさんたちのとてつもない作業におんぶしているのだ。
本書のエピソードを読むと、自分の親しか知らないボクは介護の現場の実態をまるでわかっていなかったことがよくわかる。老いや死と向き合う続ける仕事の真実が本書には書かれている。高橋さんと言う人の事例が書かれている箇所で、行政側の担当者とやり合う場面が出てくるが、役所の対応に疑問をもつことが多いボクは「さもありなん」と感じてしまう。介護や支援が必要な本人に寄り添うとはどういうことなのか、考えさせられた一冊でした。