オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび733

井上寿一「教養としての『昭和史』集中講義」を読む1

本書は昭和初期からスタートします。不況の時代に輪をかけて世界恐慌が襲う。大部分の庶民の暮らしは苦しいのだが、反面郊外電車に乗ってオフィスに出勤するサラリーマンが登場し、タイピストやバスの車掌が女性の花形職業として憧れの的になる。
夫が外で働き、妻は専業主婦として家事・育児という分担は、高度経済成長期の一時期の現象であり、昭和の他の時期はどこも夫婦共働きで頑張っていたと語っている。
日本史の教科書が時代の様相を切り取るのは、どうしても限界があると言いたげです。

経済的に苦しくなった日本は、満州事変に始まる軍部の暴走に、景気が良くなる望みを託してしまった。日清日露とも短期決戦で収束したため、15年戦争の泥沼にズブズブ入り込んでしまうことが予想できなかったのでしょう。

政治面を見ると、昭和初期の国会では、民政党と政友会という二大政党が機能していたと語ります。ところが不戦条約、海軍軍縮条約、協調外交において、この二大政党は互いの足の引っ張り合いを始めます。教科書が単純な構図で整理しようとしているのに対して、本書はより細かい動きに踏み込んで実際の動きを説明します。国際連盟脱退に至る前に、民政党がどうやって英米の信頼を繋ぎ止めようとしていたのかを井上さんは語ってます。
外交と同時に経済政策でも両党は対照的で、緊縮財政(景気はよくなりません)を主張しながら、なぜか選挙で大勝した民政党濱口雄幸内閣と積極財政を掲げた政友会の主張は正反対です。それにしても甘言を弄することなく選挙に買った濱口雄幸は凄い。

明日の投稿に続きます。

f:id:hoihoi1956:20250604014859j:image