オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび739

岩崎育夫「入門 東南アジア近現代史」を読む

 


東南アジアの歴史が、①土着国家の時代②植民地時代③独立を果たした時代④権威主義的な開発主義国家の時代⑤一進一退の感がある民主化の時代〜に分けて語られる。②についてはほとんどの国が植民地として支配された中で、唯一タイだけが独立を保つ。チュラロンコン国王によるチャクリー改革により、タイだけが近代国家としていち早く自立したのです。この国王はなかなかすごい人で、日本の明治維新に当たる変革をほとんどの一人で成し遂げてしまっている!

世界史のおさらいになってしまうけれど、この頃東南アジアを植民地化した国は、オランダ、フランス、イギリス、そしてスペインを破りフィリピンに触手を伸ばしていたアメリカであります。そして大東亜共栄圏という美名で飾り立てた1941年からの日本軍による支配。

なぜ日本軍が東南アジアへ支配を広げられたのかは、当時ナチスドイツにヨーロッパのほとんどが占領され、本国が植民地に軍隊を送るどころではなかったからでしょう。

日本による傀儡政権とは言え、建前的にはいくつかの国が「独立」します。実態は、日本がヨーロッパの国々に代わってさらに過酷な植民地支配をしたのですが。

日本が敗れて、立ち去ると「本格的」な独立を目指す動きが始まる。宗主国と戦争になった国もあるし、平和的に独立に移行した国もある。私たちが決して忘れてはいけないのは、ベトナムに介入したアメリカの愚行でありましょう。

インドネシア共和国の国是に「多様性の中の統一」という言葉がある。

東南アジアの地域は、それぞれに土着国家当時からの王族がいて、宗教は仏教・イスラム教・ヒンドゥー教キリスト教と様々、さらに民族も植民地時代に華人やインド人が大量に訪れたが、そもそもそれ以前もたくさんの民族が暮らす地域であった。

そこがほぼ植民地時代の国境線そのままに独立国となるのです。大きな混乱が起きても不思議ではない状況です。たしかに今現在も少数民族に対する迫害など許し難い蛮行がある。

それらの課題と日々向き合いながら、東南アジア諸国はなんとか現在の国家体制を維持している。

「多様性の中の統一」という言葉に世界中の国々が自国の体制を振り返る視点が含まれているように思いました。

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