オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび740

遠藤順子「ビルマ独立に命をかけた男たち」を読む

 


遠藤さんのお父様は、戦前塩水港製糖株式会社の社長をなさっていた方で、本編は夫の遠藤周作氏ではなくお父様の話から始まる。

話は日本の統治下にあった台湾(塩水港製糖が事業展開していた)と標題であるビルマを中心に進む。

戦前の日本軍の動きや海外統治については、様々な歴史観の元に未だに議論が絶えないけれど、日本の統治下(傀儡政権下)においてアジアを植民地から解放しようとした動きと現地の人々と力を合わせて宗主国からの解放を企て独立を目指した人の動きが混同されているような気がします。

例えば、辛亥革命の立役者である孫文を明治〜大正期に日本からサポートしていた宮崎滔天の志と昭和に入り本来ソ連への備えとして駐屯していたはずの関東軍が中国侵略を侵略する動きとは、かなり違うと感じるのです。

また化外の地という言葉が出てくる。他ならない台湾のことです。今や世界中の資本家の目が注がれているこの島が、実は中央政府から見放されていた土地だったのですね。後藤新平新渡戸稲造の実績と共に、塩水港製糖の活動が語られています。

さて、いよいよビルマ独立の話。南機関というビルマ独立をサポートする特務機関と鈴木敬司機関長の名前が登場します。

大戦後のビルマの独立は、スーチーさんの父であるアウン・サンによって実を結ぶのですが、アウン・サンを始めとする独立の志士三十名は、海南島の訓練所で日本軍によって厳しい訓練を受けたのです。この三十人の活躍は現在もなお英雄視されることになります。

やがてボ・モージョ(雷帝。本書の表記)に扮した鈴木機関長とアウン・サン率いるビルマ独立軍が、「ドハマ(独立)」の歓声に沸き立つ中ラングーン(今のヤンゴン)に入城します。

 


しかしこの直後大本営から発令された指示は、ビルマに軍政を敷くというものでした。それどころか現地の第五十五師団はビルマ独立軍を排除する動きに出ます。この辺りから南機関の志と南方軍事司令部の占領政策があからさまに矛盾しています。

 


イギリンの植民地支配から逃れようと日本を頼っていた親日の時代から、日本軍の礼を失する心ない行為によって反日・抗日に変化していくビルマ人の心理を本書では追いかけています。中でも駐日ビルマ大使として日本との橋渡し役であり、謎の死を遂げたテイン・マウン氏の葛藤が、本書を読むと行間から理解できます。

 


なぜ戦後80年を経た今でもミャンマーには親日家が多いのか。本書を読むとそれが鈴木敬司少将や南機関が独立に果たした功績と関連していることがよくわかる。同時にアジア解放とアジア侵略が大日本帝国軍部の顔の裏表であったことも。

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