真山剛「非正規介護職員ヨボヨボ日記」を読む
「利用者は神様、職員は奴隷」。本書にはキツイ仕事のリアルが描かれている。
どうやら筆者が勤める施設は、鹿児島市かその近郊らしい。桜島が見えることが施設のアッピールになると言うから、目に馴染んだ風景というのは、施設に暮らす人々にとって大切なのだろう。ちなみに私の住む神奈川県ならやはり富士山が見えることだろうか。
筆者が建設コンサルタント業をしていた頃、役所への挨拶回りでイヤな思いをした話が出てくる。その次に「経験が人を育てるのではなく、むしろ鈍感にしてしまうケースもあるのだ」と続く。公務員に限らず思考停止が進めば感性も磨耗してしまうのだ。
「ホがない生活」という言葉が出てくる。何でも南九州の方言で、実りがないとか間が抜けたという意味らしい。何もしなかった一日と利用者が呟かれたことを受けて、ホがないの話に繋がる。ボク自身もまごまごしているホがない日常に突入してしまいかねないのだけど。
口癖のように「ありがとう」の一言を添える利用者のエピソードが書かれている。「ありがとう」という言葉には人を前向きにする力があると思う」.と著者は書くがその通りだと思う。そのすぐ後に「ごめんなさい」や「すいません」を繰り返す人の話が出てくる。実に好対照。それも人柄・個性と言ってしまえばその通りだけど、どちらかと言えば「ありがとう」の方を増やしたいなぁ。
本書の最後を飾るのは桐山藤十郎(仮名)さん。ホラ話ばかりで何が本当かわからない人だと言いながら、筆者とは馬が合うみたいだ。藤十郎さんの話には失敗談が多い。そして職を転々と変えて介護職にたどり着いた筆者も、失敗を重ねてきた人らしい。
結局は人と関わることへの底なしの興味や好奇心が本書を生むエネルギーになったと思う。人間死ぬまで人と人の間で生きているのだ。人への興味は失いたくないな。これが読後感想です。
